業務フローとは、企業や組織が行う業務や作業手順を視覚的に表現したものです。主に、業務の流れを図やフローチャートの形で示し、各工程の順序や担当者、使用するシステムなどの関連要素を明確にするために使用されます。業務プロセスフロとも呼ばれ、複雑な作業やプロジェクトの進行を分かりやすくし、業務の合理化や改善を図るためにビジネス面で用いられます。
この記事では、業務フローの書き方やルール、覚えておきたい記号や作成ポイントなど、知っておくべきことすべてを説明しています。また、業務フローの初心者でもすぐにはじめられるわかりやすい業務フロー テンプレートや Lucidchart のワークフロー図ソフトについても紹介しております。
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業務フローとは?
業務フローとは、業務内容や業務の判断及び処理の方法を視覚的に表現する図です。標準化された記号や図形を使い、業務の開始から完了までのプロセスを手順別に示します。また、プロセスのどの時点において、誰が担当者となるかを示す図でもあります。業務フロー図の中でルールや組織の業務に対する処理法を視覚化したデータや図のことも業務フローと言います。
業務フローは、従業員がそれぞれの役割や業務の順序を理解したり、異なる部の間でのコミュニケーションを高めるためにも有用です。業務フロー図は現在では行政、金融から商取引に至るまで、多種多様な業界で使われています。
業務フローの用途と使用例
業務フロー図は元々製造業で生まれましたが、現在ではさまざまな業界で活用されています。以下にその具体例を示します。
医療
: 病院では、救急治療室での患者受け入れ手順を業務フロー図で明確に示すことができます。軍事
: 部隊展開時の手順を視覚化するために、業務フロー図が利用されています。金融
: 決済処理や資金回収、発注手続きなど、さまざまなプロセスを記録・管理するのに役立ちます。教育
: 大学生の授業登録手順など、さまざまな教育プロセスに業務フロー図が活用できます。電子商取引
: 注文から商品受け取りまで、顧客がたどるプロセスを図解することで、業務の流れを把握しやすくなります。
業務フロー図の利点は、プロセス全体を視覚的に示すことで、業務の理解を深め、潜在的な問題やボトルネックを事前に発見できる点にあります。また、プロセスの指標を追跡して非効率を排除し、改善を図ることが可能です。さらに、手動プロセスの自動化にも役立ちます。従業員が自分の役割や他の部署との関連を把握することで、コミュニケーションの向上や組織の結束強化にも貢献します。
業務フロー図の種類
業務フローを図示する方法にはさまざまな形式があり、目的に応じて使い分けることが可能です。以下に、代表的な業務フロー図を紹介します。
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ANSIフローチャート: 米国国家規格協会(ANSI)による記号を使用した標準的なフローチャート形式です。業務フローに含まれるさまざまな手順を共通の記号で表現し、業務プロセスフロー図の最初の標準として広く採用されています。
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UMLアクティビティ図: 統一モデリング言語(UML)を用いた図で、プロセスの手順と制御の流れを視覚的に表します。特にソフトウェア開発やシステム設計において、複雑なプロセスをわかりやすく整理するために使われます。
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BPMN(ビジネスプロセスモデリング表記法): UMLに似たフローチャート技法を用い、業務プロセスや情報の流れを視覚化する方法です。ビジネスと技術の両領域で共通の言語として利用され、アウトプットよりも内部の業務プロセスに焦点を当てています。
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スイムレーン図: 組織内の各部門やユニットを横に並べ、その間の相互作用を強調する図です。特定の業務がどの部門で行われているかを明確にし、非効率性や重複作業を高次的に把握できる点が特徴です。
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SIPOC図: サプライヤー(Suppliers)、インプット(Input)、プロセス(Process)、アウトプット(Output)、顧客(Customer)の要素を示すフレームワークです。データやプロセスの流れを俯瞰し、サプライチェーンや業務の全体像を整理する際に役立ちます。
業務フロー図の構成要素
業務フローの要素はいずれも、各ステップ間の流れを図示するために作られたものです。各ステップに以下の3つのパラメーターのいずれかが含まれます。
- 入力 : ステップ完了に必要な労働力、資本、装置や情報。
- 変換 : 場所、物理的特性、所有権や目的の変更など、出力を生み出す変化。
- 出力: 変換の結果。
業務フロー記号と図形
業務フロー図では、特定の図 形や記号を使って対象のプロセス内の手順やアクションを示します。一般的な記号や図形には以下のようなものがあります。
| 楕円形 | プロセスの開始点と終了点を示します。 |
長方形 | 指示またはアクションを示します。 | |
ひし形 | 決定を行うべき点を示します。この点で行われる「はい」または「いいえ」の決定以降、ワークフローは2つの異なるパスをたどります。 | |
円 | 矢印で区切られたセクション間をジャンプする際の結合子として使われます。 | |
矢印 | 次の手順の方向を示します。 |
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図を作成業務フロー図の書き方
役立つ業務フロー図を作成するためには、いくつかの手順を踏む必要があります。以下にその手順を示します。
観点と目的を決める
まず、業務フローをどの視点から描くか
を決めます。例えば、企業側の視点か顧客側の視点かを考慮します。また、現行の業務プロセス(As-Is)をそのまま表すか、理想的なプロセス(To-Be)を示すかも検討します。現行プロセスのラフスケッチを作成
次に、現状の業務プロセスをラフに描きます。この段階では、組織内で繰り返し行われる業務の全体像を高いレベルで捉え、主要なステップを大まかに示します 。詳細な要件収集
ラフスケッチができたら、次は詳細な情報を収集する要件収集フェーズ
に移ります。各ステップに関与する従業員から具体的な情報を集め、プロセスを深掘りしていきます。この際、次のような質問を従業員に投げかけます。
• 業務全体の目標は何か?
• プロセスの開始と終了のタイミングは?各ステップで行う具体的なアクティビティは?
• それに関与するのは誰か?
• その後に続く作業は何か?
• プロセスが通常の流れから外れる場合があるか?
• 意思決定が必要な場面で、どのような情報が判断材料となるか?ワークフロー分析
必要な情報が集まったら、ワークフロー分析
を行い、プロセスを改善します。次の3つのステップに注意しましょう。
1. 分類する:
タスクを「不可欠」「有用」「望ましいが不要」「要排除」に分類し、重要度に基づいてランク付けします。これにより、業務の優先度や弱点を迅速に把握できます。
2. 弱点を特定する:
冗長な手順、ボトルネック、データの重複入力、作業の遅れにつながる要因を洗い出します。
3. 将来像を考える:
ワークフロー分析は、将来の目標に対して組織が適切に進んでいるか確認する機会です。今後5年間の目標を考え、それらの達成に必要なタスクが現在のワークフローに反映されているかを確認しましょう。作図の準備
作図に移る準備が整いました。Lucidchart
のようなツールを使うと、スムーズに図を作成できます。無料のアカウントを作成し、組み込みテンプレートを利用して図形やテキストを追加し、ワークフローをカスタマイズしてみましょう。
業務フロー図の8つのルール
業務フロー図を作成する際には、効果的でわかりやすい図を作成するためにいくつかの基本的なルールやガイドラインを守ることが重要です。以下は、業務フロー図を作成する際の主なルールです。
- 目的と範囲を明確にする
- 標準的な記号を使用する
- シンプルかつ読みやすくする
- 論理的な流れを守る
- 詳細な説明を適宜追加
- プロセスの分割を活用する
- 関係者からのフィードバックを得る
- 最新の状態を維持する
これらのルールを守ることで、業務フロー図は効果的に機能し、関係者にとって分かりやすく有用なものとなります。また、シンプルさと正確さを意識することで、プロセスの可視化がスムーズに進みます。
業務フロー図の歴史
現代における業務フローの起源は、1880年代後半に遡ることができます。「ワークフロー」という用語が初めて登場したのは、1921年に発行された鉄道工学ジャーナルでのことです。ワークフローの生みの親とされ、いわゆる科学的管理法の提唱者であったフレデリック・ウィンズロー・テイラーと機械技術者で経営コンサルタントでもあったヘンリー・ガントは、特に製造業において、合理的な労働組織の研究を初めて行った人物として知られています。コピー機やタイプライターの登場により、オフィス環境の技術的な高度化が進むに従い、業務フローシステムの知識をさらに深め、普及していく動きもまた拡大しました。
最適化理論の応用範囲の拡大、さらに第二次世界大戦とアポロ計画という2つの要因により、組織業務の合理化に対するニーズは高まりました。総合的品質管理の概念が普及し、企業がグローバルな競争力強化を目指す中、1980年代にもワークフローに関する関心が盛り上がりました。製造と業務プロセスにおける欠陥の識別と排除を目的とする手法、シックスシグマと並び、業務フローは総合的品質改善の取り組みに貢献しました。
業務フロー改善のための5つの理論
業務フロー 改善のための理論には、技術者であり経営コンサルタントでもあったW・エドワーズ・デミングとジョセフ・M・ジュランが1980年代に提唱した理論が礎となり、さまざまなアプローチが発展してきました。以下に、現在も広く活用されている5つの代表的な理論を紹介します。
1. シックスシグマ
シックスシグマは、統計理論に基づいた品質管理手法で、製造プロセスにおける欠陥品を100万分の3.4まで抑えることを目標とします。この手法は、プロセスの観察やデータ分析を通じて、品質改善を行うことに焦点を当てています。シックスシグマでは、以下の2つのメソッドが主に使用されます。
DMADV
: 定義 (Define)、測定 (Measure)、分析 (Analyze)、設計 (Design)、検証 (Verify)DMAIC
: 定義 (Define)、測定 (Measure)、分析 (Analyze)、改善 (Improve)、管理 (Control)
2. 総合品質管理 (TQM)
総合品質管理は、コミュニケーションと協力を通じて、製品品質や業務環境を改善することを目指す理論です。このアプローチでは、部門間や従業員間の協力を強化し、全社的な品質向上を目指します。品質向上の責任は全員が共有し、継続的にプロセスを改善していくことが重視されます。
3. ビジネスプロセス・リエンジニアリング (BPR)
ビジネスプロセス・リエンジニアリングは、業務プロセス全体を根本から再設計することを目指します。アルゴリズムやデータ分析を駆使し、変化する状況に対応できる効率的なプロセスを作り上げます。このアプローチでは、業務のあらゆるレベルを再評価し、大胆な改革を行うことによって競争力を高めることを狙います。
4. リーン方式
リーン方式は、ムダを排除して効率を最大化する理論です。余分な間接費や不要な作業を削減し、必要最小限の資源で高い成果を上げることを目指します。リーン方式では、変化する市場環境にも柔軟に対応できる「スリムな」組織を作り上げ、競争優位性を維持することが重要とされています。
5. 制約条件の理論 (TOC)
制約条件の理論は、プロセスのボトルネックを特定し、そこに集中して改善を行うアプローチです。この理論は、「鎖の強度は最も弱い部分で決まる」という考えに基づき、業務全体のパフォーマンスを制限している要因(制約条件)を見つけ、それを改善することで業務全体の効率を高めることを目指します。
これらの理論は、業務フロー改善において多角的なアプローチを提供し、効率向上や品質改善を支える重要な手法として広く活用されています。それぞれの理論が異なる視点から改善に取り組むため、業務の性質や目標に応じて適切な方法を選ぶことが重要です。