このガイドでは、BPMNとは何かをはじめ、BPMNの書き方、BPMN 2.0 の基本、歴史、目的、記号、図の種類やビジネスプロセスモデリング(BPMN)に関する主なヒントなどを紹介します。
この記事を読むのに必要な時間 : 5 分
初心者のあたなでも、プロのあたなでも、BPMNや業務フローが簡単に作れる。今すぐLucidchartでその複雑なドキュメントを見える化させてみませんか?
BPMNとは?
BPMN(Business Process Model and Notation)は、以下の意味を持つ言葉の略称です:
-
Business Process(ビジネスプロセス):業務やビジネスの活動、手順、ワークフローを指します。
-
Model(モデル):その業務プロセスを視覚的に表現した図や設計を指します。
-
Notation(表記法):業務プロセスを表現するために使う標準的な記号やシンボルを意味します。
つまり、BPMNは「ビジネスプロセスを視覚的にモデル化するための標準的な記法」という意味で、企業内での業務プロセスを明確に示し、改善や管理を行うためのツールです。
BPMN図とは、業務プロセスを最初から最後まで視覚的に表現するためのフローチャート手法です。これにより、プロセスの各段階における業務活動や情報フローを詳細に示すことができ、ビジネスプロセスの管理において重要な役割を果たします。

BPMNの目的は、業務の効率性を向上させ、変化する状況に適応し、競争優位性を確保するための改善策をモデル化することです。近年、BPMNの標準化が進み、ビジネスプロセスモデルや表記法など、若干異なる名称で呼ばれることもありますが、略称の「BPMN」は変わりません。なお、BPMNはソフトウェア設計で用いられる統一モデリング言語 (UML) とは異なるものです。
BPMNのメリット
BPMNの主な利点は以下の通りです:
• 視覚的な把握
BPMNは、ビジネスプロセスの参加者や利害関係者がプロセスの手順を視覚的に把握できるようにします。これにより、プロセス全体をシンプルで直感的な図で理解でき、関係者間の共通認識を促進します。
• 詳細な情報の伝達
実務において、実行者に具体的な手順や必要な情報を伝えるためにも役立ちます。詳細な情報を視覚的に示すことで、業務の進行がスムーズになります。
• 共通の言語として機能
BPMNは、ビジネスアナリスト、プロセスの参加者、経営陣、技術開発者、外部のチームやコンサルタントなど、さまざまな利害関係者にとって共通の言語として機能します。これにより、業務目標と実際のプロセスとのギャップを埋め、プロセス改善が効率的に行えます。
• コミュニケーションの円滑化
BPMNを使うことで、視覚的に情報を整理でき、文章では伝わりにくい内容もわかりやすく伝えることができます。図を使うことで、関係者同士のコミュニケーションが円滑になり、協力が強化されます。
• 効率的な業務プロセス
図式化されたプロセスを通じて、質の高い成果が得られ、業務プロセスの効率化を実現できます。これにより、より良い結果を生み出すためのサポートができます。
• システム統合と自動化
BPMNは、XML(拡張マークアップ言語)を使った標準化された形式に変換でき、システム間での連携や自動化にも適しています。特に、BPEL(ビジネスプロセス実行言語)やBEPEL4WS(ウェブサービス向けビジネスプロセス処理言語)などを使って、ウェブサービスとの連携を強化できます。
BPMNの用途
ビジネスプロセスモデリングは、手描きのシンプルな図から、充分な実装情報を記載するための拡張可能な要素を含む複雑なものまで、多岐にわたります。
その最も高度な形態である BPMN は、資格認定アナリストにより利用されています。オブジェクトマネージャーグループ (OMG) では、5種類の BPMN 2.0 認定資格試験 OCEB 2 (OMG-Certified Expert in BPM 2.0、OMG認定BPMエキスパートプログラム) を提供しています。
そのうち1つはビジネス指向のもの、もう1つは技術指向のものです。OMG は、統一モデリング言語 (UML) がソフトウェアモデリングの標準となったのと同じように、BPMN 2.0 をビジネスプロセスモデリングの標準とすることを目指しています。
BPMN は多大な時間と労力を要するものですが、結果として得られる理解と改善の程度もまた大きなものです。バージョン 2.0 は、従来のバージョンをより広範な記号と表記法の標準セットで強化したもので、詳細な作図が必要なユーザーにも適しています。
ビジネスプロセス管理の背景にあるのは、継続的改善のライフサイクルの確立という概念です。このサイクルには、モデル化、実装、実行、監視、および最適化というステップが含まれます。その中で鍵となる役割を果たすのが BPMN 図です。
BPMN図の要素と記号
BPMN では、ビジネスプロセス図において以下の4種類の要素を用います。
フローオブジェクト:
イベント、アクティビティ、ゲートウェイオブジェクトの接続:
シーケンスフロー、メッセージフロー、関連スイムレーン:
プールまたはレーン成果物:
データオブジェクト、グループ、注釈
以下では、これらの個別の要素をビジネスプロセスに用いる方法を説明しています。
イベント
あるプロセスを開始、修正または完了させるトリガー。イベントの種別には、メッセージ、タイマー、エラー、補償、シグナル、キャンセル、エスカレーション、リンクなどがあります。これらは円で示され、イベントの種別により内部に他の記号が含まれます。また、機能により、「送り手」と「受け手」のいずれかに分類されます。

アクティビティ
ある人物やシステムにより実行される特定の活動またはタスクを指し、角丸の長方形で示されます。サブプロセス、ループ、補償や複数のインスタンスを加えてより詳細なものにすることも可能です。

ゲートウェイ
条件やイベントに基づきパスを調整できる意思決定ポイント。ひし形で表します。排他的、包括的、平行、複雑、あるいはデータやイベントに基づくものとすることができます。
シーケンス フロー
実行されるアクティビティの順序を表し、矢印付きの直線で示されます。条件付きフローやデフォルトのフローを示す場合もあります。
メッセージ フロー
部門などの組織的境界を指す「プール」にまたがるメッセージの流れを示します。プール内のイベントやアクティビティを接続することはありません。始点に円、終点に矢印の付いた破線で示されます。
関連
点線で示され、成果物やテキストをイベント、アクティビティ、またはゲートウェイに関連付けます。
プールとスイムレーン
プールは、プロセスの主要な参加者を表します。別の企業や部門に別のプールが存在することもありますが、これも同様にプロセスに関与します。プールをもつスイムレーンは、特定のロールや参加者のアクティビティとフローを示し、対象プロセスのどの部分に誰が責任を負うかを示します。
成果物
必要となるレベルの精度で図を作成するために、開発者が追加する情報です。成果物には、データオブジェクト、グループと注釈の3種類があります。データオブジェクトは、アクティビティに必要なデータを示します。グループは、アクティビティの論理的なグループ分けを示しますが、図のフローを変えることはありません。注釈は、図の一部についての追加説明を示します。
初心者のあたなでも、プロのあたなでも、BPMNや業務フローが簡単に作れる。今すぐLucidchartでその複雑なドキュメントを見える化させてみませんか?
BPMNの作成BPMNの書き方
1.
プロセスの範囲を明確に定義する
プロセスをモデル化する際は、始点と終点を明確に定義することが重要です。これにより、どこからどこまでが業務プロセスの一部であるかが理解しやすくなります。始点と終点の定義は、プロセスの目的を明確にし、後での評価や改善を行いやすくします。
ポイント:
-
開始イベントと終了イベントを明確に設定し、プロセスの範囲を示します。
-
プロセス内でのタスクやフローがどのように影響し合うかを意識して、過度に複雑にならないようにする。
2.
現在のビジネスプロセスを図式化する
BPMNでの詳細なモデリングを行う前に、現行のビジネスプロセスをまず図式化し、非効率性や問題点を強調することが有益です。この段階では、BPMNの記号を過度に使用せず、単純にプロセスの流れと関係を視覚化します。
ポイント:
-
問題点やボトルネックがどこにあるかを見える化します。
-
初期段階では大まかなフローで問題点を特定し、後から詳細化します。
3.
ページサイズとレイアウト
BPMN図はできるだけ1ページに収めるように心がけましょう。特に大きなページサイズを使用する場合でも、プロセス全体を1つの図で視覚的に表現できるよう調整します。複雑なプロセスを複数ページに分けることは避け、必要最小限のページサイズで完結するようにすることが大切です。
ポイント:
-
1ページに収めることで、利害関係者が理解しやすくなり、議論が活発になります。
-
無理に1ページに収めるのではなく、プロセスが複雑な場合には適切に分割して説明を補完します。
4.
シーケンスフローのレイアウト
BPMNのシーケンスフロー(プロセスの流れ)は、水平に配置するのが基本です。これにより、時間の流れが直感的に理解しやすくなります。特に複数のタスクやサブプロセスがある場合は、フローを水平方向に配置することで、各ステップの順序が明確になります。
また、関連する情報やデータフローは、垂直にレイアウトすることで、プロセスフローとの違いをはっきりさせ、視覚的に混乱を防ぐことができます。
ポイント:
-
シーケンスフロー(タスクの実行順)は水平に描く。
-
関連フロー(データやメッセージの流れ)は垂直に配置して、プロセスと情報フローを分けて表現します。
5.
利害関係者ごとのバージョン管理
BPMNは、役割や利害関係者ごとに異なる視点を提供することができます。例えば、プロジェクトマネージャーにはプロセス全体の流れを示し、技術担当者には実行タスクやシステム間のデータのやり取りを強調するなど、利害関係者のニーズに応じたバージョンを作成します。
ポイント:
-
それぞれの利害関係者にとって重要な情報のみを提供します。
-
バージョン管理を行い、関心のある領域に特化したモデルを作成します。
まとめ
BPMNを効果的に活用するためには、プロセスの範囲を明確にし、視覚的に分かりやすい形で整理することが重要です。また、利害関係者に合わせたバージョン管理や、ページサイズやフローのレイアウトにも注意を払い、プロセスの効率化に向けて適切な改善を行います。データフローやシステム構造の詳細は他のツールに任せ、BPMNはあくまで業務フローのモデリングに特化することが、効果的なプロセスマネジメントにつながります。
BPMN 図に使われるサブモデル
この図は、技術的な分野と非技術的な分野を問わず、多様な受け手への情報伝達を目的としています。受け手が図の異なるセクション間の違いを識別し、各自に最も関連性のある情報を見つけやすくするために、サブモデルが役立ちます。サブモデルには、以下のような種類があります。
-
個別ビジネスプロセス:特定の組織内で実行され、プールや組織の境界を越えることはありません。
-
抽象ビジネスプロセス:内部プロセスと外部の他のプロセスや参加者との相互作用を表現します。抽象プロセスは、内部プロセスがやり取りする必要のあるメッセージの流れを示し、内部プロセスそのものは描写しません。
-
協業ビジネスプロセス:異なる企業間での相互作用を示し、複数の組織間での協力の流れを表現します。
その他の種類のBPMN図
BPMNでは、この他にも、カンバセーション図、コレオグラフィー図、コラボレーション図の3種類の図があります。
コレオグラフィー図:
複数の参加者間の相互作用を示します。サブコレオグラフィーを用いて拡張することも可能です。コラボレーション図:
複数のプールを用いて複数のプロセス間の相互作用を示します。コラボレーション図では、プール、プロセスとコレオグラフィーのすべての組み合わせを用いることができます。カンバセーション図:
コラボレーション図を簡素化した図であることが一般的です。あるビジネスプロセスに関連する一連のメッセージのやり取りを示します。サブカンバセーションを用いて拡張することも可能です。
BPMNの歴史
ビジネスプロセスモデリング表記法はビジネスプロセスマネジメントイニシアティブ (BPMI) により開発され、数回の改訂を経ています。2005年に同グループは オブジェクトマネジメントグループ (OMG) と統合し、この取り組みを引き継ぎました。2011年に、OMG は BPMN 2.0 を発表し、この方法の名称をビジネスプロセスモデル及び表記法に変更しました。これは、ビジネスプロセス図の記号と表記の選択肢を広げ、ビジネスプロセスモデリングの標準をより詳細に規定するものです。また、BPMN は本来意思決定を対象としたものでないため、2014年以降、意思決定モデル及び表記法と呼ばれる意思決定フロー図作成方法が BPMN の補完として追加されています。
Lucidchart でBPMNを作成するポイント
Lucidchart を使えば、ビジネスプロセスモデルの作成も容易です。新規登録後は、ログインして空白の文書を開くか、またはテンプレートを使って作成を開始します。BPMN 図形ライブラリを開き、必要に応じて図形をドラッグ&ドロップしてエディター内に配置します。
お好みに合わせて線のスタイルやテキストの書式を設定し、要素を再配置することもできます。その後は、好みの方法で図を共有、ダウンロード、エクスポートすることが可能です。