作業分解構造を作成するためのルール
- 目標達成に必要な作業をすべて含める。
- 作業を重複してカウントすることは決してしない。
- アクションではなく成果に焦点を当てる。
- 作業パッケージには8時間以上、80時間以下の作業を含める。
- 詳細レベルはおよそ3つを含める。
- 各作業パッケージを特定のチームや個人に割り当てる。
プロジェクト管理の世界に足を踏み入れたばかりのときには、まるで周囲が皆外国語を話しているかのように思えてくるものです。何より、QCD、PMBOK、ACWP、QFD、RBS、SOW、SWOT, FPIF、WBS などなど、多種多様な略語が飛び交い、1つの意味を調べている間に次の新しいものが飛び込んでくるのが難関です。
ある時点でこの流れも止まりますが、今度は略語のリストを眺めながら、考え込んでしまうことになります。まず、一番下の「WBS」とは何の略でしょう。World Business Satellite?West By South?White Buffalo Society?Whole Body Scan?War Between the States?Write Back Soon?近そうな気もしますが、残念ながら不正解です。
プロジェクト管理の分野において、WBS とは作業分解構造 (Work Breakdown Structure) の略で、大規模なプロジェクトの計画、管理と評価を可能にする基本的なツールを指します。この記事では、このツールの内容を詳しく説明します。
作業分解構造とは?
作業分解構造とは、その名のとおり、大規模なプロジェクトや目的から始め、これを小さく、管理可能で、評価やチームへの割り当てがしやすい部分へ分割するものです。プロジェクト完遂に必要な個別のアクションに焦点を当てるのではなく、通常は成果物や具体的で測定可能なマイルストーンに注力します。こうした成果物を作業パッケージ、タスク、サブタスクやターミナル要素と呼ぶこともあります。作業分解構造は例えば、以下のような形となります。
プロジェクト管理に作業分解構造 (WBS) を使う理由
大規模なプロジェクトを分割することでさまざまなメリットが得られます。特に以下の点で有効です。
- プロジェクトのコストを見積もる。
- 依存関係を確立する。
- プロジェクトのタイムラインを決め、スケジュールを作成する。
- 業務記述書 (SOW) を作成する。
- 担当範囲を割り当て、役割を明確にする。
- プロジェクトの進行状況を追跡する。
- リスクを特定する。
大規模で複雑なプロジェクトを一気に消化して解釈するのではなく、分割して部分ごとに正確に視覚化し、取り組むことで、こうしたメリットが得られるようになります。
作業分解図を作成する方法
- 達成すべき包括的な目的を記録します。新しいソフトウェア機能の開発からミサイル構築までどんなものでも結構です。
- プロジェクト全体を小さな部分へ分割していき、取るべきアクションをリストアップする前の時点で止めます。アクションよりも具体的な成果物に焦点を当てるようにしましょう。
- プロジェクトの性質に応じ、プロジェクトのフェーズ、特定の大規模な成果物やサブタスクごとに分割していきます。
作業分解構造を作成する際のヒント
最善の成果が得られるよう、作業分解構造を作成する際には以下のルールに従いましょう。
- 100% ルール。WBS に示す作業には、付帯作業や無関係な作業を含め、全体的な目標の達成に欠かせない作業を100%含めます。また、あらゆるレベルの子タスクについて、親タスクの完了に必須となるすべての作業を考慮する必要があります。
- 相互に排他的。サブタスクを2回含めたり、作業を重複してカウントすることはしないようにします。こうすると100%ルールに反することになり、プロジェクト完了に必要なリソースを計算する際にミスが生じます。
- アクションではなく成果を重視。アクションよりも成果物や結果に焦点を当てることを忘れずに。バイクを開発している場合なら、例えば「ブレーキシステム」が成果物、「ブレーキパッドの較正」がアクションとなります。
- 8/80ルール。作業パッケージが小さすぎず、十分なサイズに分割されているかどうかを判断するにはいくつか方法があります。このルールはその中でも最も一般的なもので、作業パッケージの所要時間が8時間以上80時間以下となるようにするというものです。この他には、10日以下 (フルタイムで80時間換算) または標準の報告期間以下とするなどのルールがあります。これはつまり、毎月作業の報告を行うなら、作業パッケージには1か月分以下の作業を含めるということになります。判断しかねる場合は、意味があるかどうかの観点から考えてみましょう。
- 3つのレベル。一般的に、WBS には3つ程度の詳細レベルを含める必要があります。WBS のブランチの中には他に比べて細分化されるものもありますが、大半のブランチのレベルが3つ程度であれば、プロジェクトのスコープと WBS に含まれる詳細のレベルは適切と言えるでしょう。
- 割り当てを行う。作業パッケージはすべて、特定のチームや個人に割り当てます。出来のよい WBS であれば作業の重複はないはずですので、責任範囲も明確になります。
作業分解図の例
では、実際の例を参考に作業分解構造の作り方を見ていきましょう。以下は住宅建築のための作業分解構造です。
WBS 作成のルールがこの例にどう当てはめられているかに注目してみましょう。まず、住宅建設プロジェクトは「基礎」「外装」「内装」の3つの大きなセクションに種類別に分けられています。こうしたセクションが1つから2つのレベル (最大3レベル) に分けられます。住宅建設に必要な作業が作業パッケージ全体に割り当てられ、合計では100%となります。この図に作業の重複はありません。各作業パッケージに予算を追加し、チームを割り当ててこの図をさらに充実させることもできます。
作業分解構造の形式
作業分解構造はいくつかの形式で作成できます。上記の例では、最も視覚的なツリー形式を使用しています。WBS を組織図のように構築してタスクの階層を示し、作業パッケージに関する追加情報のためのスペースも設けています。
アウトライン構造
テキストによるアウトラインは WBS の中でも最も単純な形式で、作成しやすく、タスクの階層を示すものです。ただ、予算、期間や割り当てなどの情報を追加するのが難しい欠点があります。
家を建てる
1 基礎
1.1 掘削
1.1.1掘り返し
1.1.2均し
1.2 枠組み
1.3 コンクリート
1.3.1 注入
1.3.2硬化
2 外装
3 内装
階層構造
この形式はそれほど直感的には見えませんが、タスクの階層を示すものです。表形式のため、ページへの収まりも良好です。
表形式ビュー
表形式ビューは、階層を表でより分かりやすく示したものです。
WBS 用語集
WBS 用語集は、形式面では階層構造に似ていますが、各作業パッケージの短い説明を含みます。プロジェクトを文書化する際には、WBS のビジュアルに WBS 用語集がしばしば追加されます。これにより、各タスクのスコープが明確になり、チームメンバー全員がそれぞれの担当範囲を理解できるようになります。
作業分解図テンプレート
以下では、作業分解構造の作成に役立つテンプレートを多数紹介しています。クリックしてテンプレートを開き、情報、レイアウトやデザインをカスタマイズしましょう。
作業分解構造 (WBS) 図
Microsoft Office で作業分解構造を作る方法
作業分解構造と WBS 用語集は通常、Microsoft Office を使った文書化やデータ分析の一部に含まれますが、WBS を Word や Excel に挿入するには、Lucidchart で図を作成し、無料の MS Office インテグレーションを使うのが最も手軽です。作図に最適化されたソフトウェアで図を作成し、残りの文章やデータの編集は Microsoft で行えます。これは、以下の手順で行えます。
1. Lucidchart の無料アカウントに登録します。
2. 作業分解構造を Excel で作成する場合は、無料の Excel 用 Lucidchart アドインをインストールします。
2. Word で作成する場合は 無料の Word 用 Lucidchart アドインをインストールします。
Lucid の作業分解構造ソフトウェアで作図を始めましょう。
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