アーキテクチャ図は、ソフトウェア システムのコンポーネントの物理的な実装を視覚的に表現した図です。ソフトウェアシステムの一般的な構造と、各要素間の関連、制限、および境界を示します。
ソフトウェア環境は複雑で、常に変わり続け、顧客のニーズの高まりや要望に対応するため、新機能が頻繁に追加されます。シームレスな拡張を実現するには、日々コーディングに関わることのないメンバーも含め、チームの全員が自社のソフトウェアアーキテクチャを理解しておく必要があります。
ここで役立つのがソフトウェアアーキテクチャ図です。開発チーム全体がアーキテクチャ図で視覚的に概要を把握することで、アイデアや重要なコンセプトを誰でも理解できる形で分かりやすく伝えられるようになります。
この記事では、さまざまなアーキテクチャ図の作成方法や種類、それぞれの用途やアーキテクチャ図作成ツール、構成図の書き方についてご紹介します。また、チームメンバーの参加とコラボレーションを促進するソフトウェアアーキテクチャ図を作成する方法についてもご紹介します。
アーキテクチャ図を作成するメリット
ビジュアルが情報の長期的な保持や記憶の想起に役立つという一般的な利点に加え、ソフトウェアシステムアーキテクチャ図を作成し活用することで次のようなメリットが期待できます。
- 理解度が高まる : システムの概要を図で把握することで、更新や新機能がシステムに及ぼす影響を判断する際に、全員がさまざまなコンポーネントの相互作用を理解できるようになります。
- コミュニケーションが改善できる : 今後の計画を全員に対して視覚的に伝えることで、すべてのチーム、部門やステークホルダーがプロジェクトの目標に向かって目線を揃えられるようになります。プロジェクト全体の進捗をステークホルダーに報告する際にも便利です。
- コラボレーションを推進し、改善の余地を特定できる : アプリケーションのシステム構造を可視化すれば、設計について議論し、上手くいくパターンを見つけ、弱点や改善できる箇所を探す過程をチーム全体でスムーズに進められるようになります。
質の高いアーキテクチャ図を作成するために必須の要素
詳細な図が必ずしも優れた図とは限りません。ソフトウェアアーキテクチャ図の作成目的は、チームメンバーやステークホルダーにコンテキスト情報を与えることであり、質の高いアーキテクチャ図には以下のような特長があります。
- システムの相互作用を表す : シンプルな図形や線を使ってプロセスの流れやさまざまな要素の相互作用を示します。こうした関連を明確にすることで、システム全体に変更が及ぼす影響を評価しやすくなります。
- 便利な注釈が含まれている : 重要な箇所に役立つ説明を加えることで、チームメンバーやステークホルダーに重要なコンテキストと情報を提供でき、図だけでは伝わりにくい微妙な内容をもれなく伝えられます。
- 参照しやすく、アクセスしやすい : 図を作っても、使ってもらえなければ無意味です。作成した図を Confluence や wiki のページに添付すれば、組織全体でのアクセスが可能になります。例会で参照しやすいよう、重要な図はチャットプラットフォームで共有することもできます。
5種類のアーキテクチャ図と書き方のヒント
さまざまな種類のアーキテクチャ図とその有用性、アーキテクチャ図の作成方法や書き方について説明します。
アプリケーションアーキテクチャ図
ソフトウェアの基本構造を俯瞰的に示す図で、ソフトウェアのコンポーネントやその関連、プロパティなどが含まれ、ユーザー、データベースやサービスなどの外部コンポーネントとの関連も表します。シンプルな図形と線でさまざまなコンポーネントを表す基本的な構造で、経営者やステークホルダーにアプリケーションの構造を説明する際に便利です。
アプリケーションアーキテクチャ図は、既存のアプリケーションのアップグレード、置き換えや統合がシステムに及ぼす潜在的な影響を評価するのに役立ちます。
アプリケーションアーキテクチャ図作成のヒント
- 簡単な図形や線でコンポーネント、関連や層などを表します。
- アプリケーション層をビジネス層、データ層、サービス層などの論理的なカテゴリーにグループ化します。
- アーキテクチャの目的と意図する成果を示します。
- アプリケーションの依存関係や相互作用を特定します。
- テキストの注釈を加え、構造、グループ化、セキュリティ上の懸念、含まれるアプリケーションの種類やアプリケーションの構成などの詳細を組み込みます。
統合アーキテクチャ図
統合アーキテクチャ図はアプリケーションアーキテクチャ図に似ていますが、この図では、さまざまなコンポーネントの相互作用に焦点が当てられています。コンポーネント間の統合に使用するプロトコルに着目することで、統合が組織の成長戦略に合致しているかどうかを判断する上での材料を得られるようになります。
こうした図は、予約代理店、フルフィルメント、チケット販売、eコマースなど、パートナーの外部システムとソフトウェアとの統合を計画するのに役立ちます。
統合アーキテクチャ図作成のヒント
- 現在のサービスがどのように構成され、内外で公開されているかを示します。
- サードパーティがシステムと統合する方法を示します。
- システムのセキュリティと管理方法を規定します。
展開アーキテクチャ図
ネットワークの境界に加え、システムを構成するプロセッサ、ノード、ソフトウェアやその他のデバイスを視覚化するのに役立つ図で、システムに含まれるコンポーネントの点数、システム内の配置と相互に通信する方法を決め、計画をスムーズに進める上で有用です。
展開図は一般に、システム内のハードウェアとソフトウェアの物理的なレイアウトの概要を把握する際に、システムがハードウェア上でどう展開するかをイメージしやすくするために使われます。アプリケーションとサービスの戦略的なアップグレードを計画し、リソースを最適化して、組織の成長に合わせた追加のプロセス要求やワークロードへの対応を行うために役立ちます。
展開アーキテクチャ図作成のヒント
- ネットワークの境界と外部システムがシステムに接続する可能性のある箇所を示します。
- インスタンスのサイズを推定し、新しいインスタンスを配置する場所を指定します。
- 共有のリソースやサービスを効率化するため、システムが他のシステムやネットワークへ拡張される方法と箇所を示します。
DevOps アーキテクチャ図
DevOps アーキテクチャ図はプロセスフロー図に似ており、アプリケーション展開の運用フローを視覚的に表し、プロセスの流れや社内外のシステムに展開される内容を示したものです。
アプリケーションの展開プロセスを改善する方法を見つけるために使われる図です。DevOps アーキテクチャは、展開ツールの継続的な改善や他のインターフェイスシステムのアーキテクチャ変更に対応するため、更新と改善が必要となります。
DevOps アーキテクチャ図作成のヒント
- 改善策を見出すためのベースラインとして現在のプロセスフローを定義します。
- どのようなアプリケーションを展開するかを示します。
- プロセスが複数の環境にまたがって流れる様子を表します。
データアーキテクチャ図
データアーキテクチャ図とは、その名の通り、データが流れ、処理され、利用される場所と方法を示す図で、システムでデータを収集する方法を定義するコンポーネントが含まれます。データストレージのリソースの更新や合理化をしたい場合に役立つ図です。データの収集と消費は常に増加するため、データアーキテクチャは頻繁な修正と更新が必要となります。
データアーキテクチャ図作成のヒント
- 現在のデータの処理方法を図解します。
- データの保存方法と保存場所を明示します。
- 推定データ増加率を示します。これにより、必要となるシステム拡張の程度をステークホルダーと共によく理解できるようになります。
- 将来の拡張に必要なコンポーネントを示します。
アーキテクチャ図作成ツール Lucidchart のテンプレートでプロセスをスピードアップ
芸術的センスがなくとも、アーキテクチャ図は作成できます。鉛筆と紙でアナログに図を描いても結構ですし、Lucidchart などのインテリジェントな作図アプリで作図するのもよいでしょう。
Lucidchart には、ネットワーク図、AWS クラウドアーキテクチャテンプレート、ソフトウェアコンポーネント図など、どんな種類のアーキテクチャ構成図でも描き出せるテンプレートが豊富に揃っています。
テンプレートを使えば、すぐに作図を開始してプロジェクトに取りかかることができます。今すぐ Lucidchart で試してみましょう。
これまでの内容を踏まえて、さっそく Lucidchart に登録してアーキテクチャ図の作成を始めましょう。
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