テクノロジー業界で働いている方なら、所属するソフトウェアチームやプロダクト開発チームでスクラムプロジェクト管理手法 (アジャイル手法の一派) を使っていることも多いでしょう。これは、一度に完全なプロダクトをリリースするのではなく、2週間単位のスプリントで作業を完了し、継続的にプロダクトを開発していくというものです。
ただ、どのプロジェクト管理手法にも共通しますが、この手法でも整理整頓が重要です。そのために重要なツールがスクラムプロダクトバックログです。
アジャイルにおけるプロダクトバックログとは、基本的には、開発チームが対応すべき項目を一覧にしたもので、プロダクトの中で完成させる必要がある項目をまとめた ToDo リストです。バックログの項目は2週間のスプリントで取り組む項目とは異なりますが、こうすることで、今後の予定を把握し、新機能リリースのための計画を立てて迅速に作業を進めることができます。
この記事では、プロダクトバックログが重要な理由、バックログの書き方と作成方法、調整の方法、さらにスプリント計画にログを反映させていく方法を説明します。
アジャイルにおけるプロダクトバックログとは?
公式スクラムガイドによれば、製品プロダクトバックログとは「プロダクトに必要となることが既知であるすべての項目を順に並べたリスト」を指します。
プロダクトバックログには実行中のスプリント中に完了しない作業も含まれ、スプリントのループの枠外にありますが、スプリントの計画方法に影響を及ぼします。プロダクトバックログは以下の関係者からのフィードバックで構成されます。
- 開発チーム
- 顧客
- ステークホルダー
この上では、実際のプロダクトバックログの一例を示しています。
プロダクトバックログが重要な理由
プロダクトバックログとは、ブレインストーミングの内容やプロダクト計画を実行に移すための手段と捉えられます。ステークホルダーや顧客からは、プロダクト改善のためのさまざまなアイデアが寄せられますが、全部が全部よいものではなく、中には価値のないものもあり、プロダクトバックログが整理されていないと、優れた貴重なアイデアとそうでないものを見分けるのが難しくなります。プロダクトバックログには、他にもいくつかのメリットがあります。
- リストとして整理され、メンテナンスがしやすい。
- 優先順位をつけやすい。
- 優先順位の変化に合わせて変更できる。
- 依存関係をひと目で確認して並べ替えられる。
- 短期的なニーズだけでなく、長期的な視点でプロダクトを捉えられる。
つまり、プロダクトバックログがあれば、チームが長期的にプロダクトを体系的かつスマートに改善できるようになります。
プロダクトバックログに含まれる要素
スクラムガイドでは、プロダクトバックログに含めることができる内容を詳細に規定しており、不要な要素を排除する上で参考になります。プロダクトバックログには以下が含まれます。
- 機能
- 関数
- 要件
- 機能強化
- 修正
ただ、単なる ToDo リストとは異なり、プロダクトバックログの項目にはそれぞれ以下のような特徴があります。
- 顧客に価値を提供する
- 優先順位が付けられている
- 見積もりがある
バックログには、メール送信といった低レベルのタスクは含めません。定期的に更改を行い、常に最新の状況を反映した記録とすることが大切です。
開発チームの効率化に役立つその他のアジャイルツールも確認してみませんか?
詳細をチェックプロダクトバックログの書き方と作成方法
スプレッドシートでプロダクトバックログを作成することがよくありますが、ここでは大きな問題が起こります。スプレッドシートは行を頻繁に移動することが困難です。また、書式設定などにも限界があり、悩みの種となります。
プロダクトバックログを作成するには、Jira Software や Lucidchartなど、より柔軟なソフトウェアを使うのがよいでしょう。Lucidchart のプロダクトバックログテンプレートを使えば、手軽にバックログの作成を始められます。変更内容が常に反映され、ステークホルダーとの共有もしやすく、書式のアレンジも簡単です。
どのソリューションを使う場合でも、以下の手順でスクラムプロダクトバックログを作成します。
1. バックログにアイデアを追加する
ステークホルダーからプロダクト改善のアイデアを集めます。
2. 主要なポイントを明確化する
ステークホルダーからプロダクトの機能追加や修正に関するフィードバックを受けたら、以下の点を必ず確認します。
- 追加や修正の理由
- 追加や修正がプロダクト全体に及ぼす価値の大きさ
- 項目の仕様
3. 優先順位を付ける
バックログには、明確に定義され、その時点で優先度の高い項目を並べ、優先度の低い曖昧な項目は下部に配置します。価値のない項目は追加しません。
4. バックログを定期的に更新する
バックログは、優先順位を見直し、改良を加えて常に最新の状態に保ちます。
プロダクト改良のアイデアが集まる中、バックログに何百もの項目が追加される場合もあるでしょう。中には破棄されるものもありますが、さらに深堀りしたいもの、最終的には開発段階に進めたい項目が次第にバックログの上方へと移動していきます。
カスタマイズ可能なプロダクトバックログテンプレートで手早く作業を始めましょう。
プロダクトバックログの優先順位付け
プロダクトバックログのオーナーは プロダクトオーナーです。プロダクトオーナーの仕事は、可能な限り最高のプロダクトを作ることであり、そのためにはソフトウェアに対して最も付加価値の大きい要素を最初に開発する必要があります。バックログは最も価値のある項目からランク付けされているので、通常は一番上には最も価値のある要素が来ますが、そうした要素には先に開発しなければならない依存関係がある可能性が高いため、そうでない場合もあります。
優先順位の高い項目は、見直しを経て、プロダクトに対する付加価値が大きいものとなります。
優先順位が中程度の項目は、見直し (各タスクを詳細化するプロセス) 候補となります。
優先順位が低い項目は、依存関係を持たせるではなく、見直し候補となるまでは無視して構いません。
次のスプリントサイクルに追加するリスト上位に近づいた項目については、対応がしやすいよう、項目の見直しを行います。各ブロックを色分けすれば項目を見分けやすくなります。例えば、十分に見直しされ、スプリント計画に組み込める段階の項目は緑で表します。優先度が中程度のものは黄色、低いものは赤などで表すほか、ちょっと遊んで全部の項目をネオンカラーにすることもできます。
プロダクトの見直し
プロダクトの見直し (リファインメント) とは、プロダクトバックログに含まれるタスクを、漠然としたアイデアではなく対応項目となるよう明確なものに変えるプロセスを指します。
例えば、デートアプリを開発しているとしましょう。ステークホルダーや顧客からのリクエストに身元チェック機能の統合があり、これをプロダクトバックログに追加しました。ただ、これだけでは、その機能の開発に必要なタスクを割り当てるのに必要な情報が不足しています。
プロダクトバックログの各タスクに必要な情報を追加することで、各項目の内容をを明確にすることができます。例えば、先程のデートアプリの身元チェック機能に関しては、身元調査を行うために提携する機関、身元調査を行うためにユーザーから収集する情報、調査の最終的な目的といった内容を簡単に追加することができます。リンクや写真などの情報も手軽に追加できます。
プロダクトの見直しには2通りの考え方があります。プロダクトバックログの全項目を見直すチームもあれば、優先順位が中程度の優先度の項目を見直して優先順位を高める形でメンテナンスを行うチームもあります。
テレワークのスプリント計画作成
スクラムプロダクトバックログを用意しておくことで、スプリント計画がスムーズに進むようになります。バックログで ToDo 項目がすでに定義されているため、スクラムボードに簡単に移動でき、各項目の見積もりを使って、次回のスプリントに追加できる対応項目の数を決めることができます。その後は、スプリントサイクルのガイドラインに沿って各項目を完成させていくことになります。
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プロダクトバックログを使うことで、今後プロダクトに追加する項目を俯瞰的に把握することができますが、その本当の価値は、対応項目を整理し、絞り込んで定義する機能にあります。この機能を十分に活用すれば、混乱を避け、体系的にプロダクトの価値を高めることに集中できるようになります。Lucidchart でプロダクトバックログを作成して、開発プロセスの重要な要素であるプロダクトバックログの共有、更新や変更がスムーズに進むことを実感しましょう。
Lucidchart について
クラウドベースのインテリジェントな図作成アプリケーション、Lucidchart は、Lucid Software のビジュアルコラボレーションスイートのコアコンポーネントで、チームがリアルタイムで共同作業し、フローチャート、モックアップ、UML 図、カスタマージャーニーマップなどを作成できる直感的なクラウドベースのソリューションです。Lucidchart はチームが前進し、より迅速に将来を見据えて構築するための最高のツールとなります。Lucid は、Google、GE、NBC Universal などの顧客や、Fortune 500 企業の 99% を始めとする世界中の主要企業にサービスを提供しています。Lucid は、Google、Atlassian、Microsoft などの業界の主要企業と提携しており、創業以来、製品、事業内容と企業文化を称える各種の賞を多数受賞しています。詳細は lucidchart.com を参照してください。
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